DCMX
「DCMX(ディーシーマトリックス)」は、2008年10月に販売を開始した国内初のマトリックス冷間ダイス鋼です。粗大な炭化物を極限まで低減することにより、優れた等方性を実現させました。熱処理時の寸法調整が容易なため、冷間プレス・冷間鍛造用金型の製作リードタイム短縮に貢献します。また、高靭性なため金型寿命向上が期待できます。さらに、高硬度で被削性にも優れ、金型のつくりやすさと高性能を兼ね備えています。
背景
冷間プレス・冷間鍛造用金型は、短納期化、低コスト化の要求が高まる一方、金型にかかる負荷が増大しており、金型製造性と金型性能を両立する素材が望まれています。当社では、2004年秋に発売した「マトリックスハイス・DRM(ドリーム)シリーズ」で培った炭化物制御技術を最大限に活用し、マトリックスタイプの金属組織をもつ新しい冷間ダイス鋼「DCMX」を開発しました。
マトリックスタイプの金属組織とは
工具鋼金属組織から「粗大な一次炭化物」を除いた組織を「マトリックス(基地)」と呼びます。「粗大な一次炭化物」は、切削工具においては摩耗を防ぐ有用な組織ですが、金型においては割れの起点になりやすく、減らす方が望ましいとされています。
鋼種名
特長
金型のつくりやすさと寿命向上に貢献する「マトリックス冷間ダイス鋼」です。
高硬度(耐摩耗性)
約500℃以上の高温焼戻し処理において、最高硬さ62HRCが得られます。表面処理にも対応可能です。
焼入焼戻し硬さ
寸法 :15×15×15 mm
焼入れ:1030℃×1h - 空冷
高靭性(耐割れ・耐チッピング性)
マトリックス化による衝撃値の向上は、金型使用初期の割れやチッピングの発生を抑制します。
靭 性
試験片:10Rノッチ、L方向
焼入れ:1030℃×1h - 空冷、高温焼戻し
優れた等方性(寸法修正工数の削減)
熱処理後の寸法変化が等方的で、最高硬さとなる約500℃の焼戻し処理において変化量が最小となります。そのため、自動車部材を成形する大形冷間プレス金型において、ブロックを組み合わせる際の寸法修正の加工時間削減、修正工程の省略が期待できます。
熱処理変寸
優れた被削性(型製作リードタイムの短縮)
マトリックス化および快削性介在物(MnS)により被削性が優れるため、金型のつくりやすさに貢献します。
被削性(焼きなまし材)
VP15TF (三菱マテリアル) φ32,
1枚刃, ダウンカット
切り込み 幅1×高さ4 mm
速度150m/min
送り0.15mm/rev
エアブロー
SKH51 (NACHI) φ5, コーティングなし 穴深さ 20mm (非貫通)
送り0.15mm/rev 乾式
カタログ
関連資料
「冷間ダイス鋼の熱処理変寸の異方性に及ぼす晶出炭化物の影響」
2007 年 78 巻 4 号 p. 289-
「熱処理寸法の制御が容易なマトリックス冷間ダイス鋼 DCMX」
2010 年 81 巻 1 号 p.53-
大同特殊鋼技報「電気製鋼」はこちらから(J-STAGEでご覧いただけます)
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