大同特殊鋼株式会社(社長:清水哲也)は、ギガキャスト工法に対応した熱間金型用鋼“DHA-GIGA”の販売を2024年9月より開始しました。“DHA-GIGA”は超大型のダイカスト*1金型に求められる焼入性*2を飛躍的に向上させることで、従来の金型用鋼に比べ使用中の割れを抑制できます。これにより超大型ダイカスト金型の寿命の安定化を実現し、大型ダイカスト部品のトータルコスト低減に貢献します。超大型ダイカスト金型用鋼の開発は日本初で、まずはギガキャスト工法の適用が先行している中国市場において本格的な発売を開始し、日本国内をはじめとした他地域についても順次供給体制の整備を進めていきます。今後拡大する需要をとらえ、2030年には年間40億円の売上規模を目指します。
1.背景
現在、世界的な環境問題を背景とした脱炭素社会の実現に向けて、自動車業界では積極的に電動化の取り組みが進められています。その一環として、バッテリーの航続距離を向上させるための部品軽量化や、コスト低減を目的とした部品点数の削減が挙げられますが、具体的な施策の1つとして自動車の車体部品をアルミニウム合金で一体鋳造する「ギガキャスト」の活用が進められています。
ギガキャストは、鉄素材を用いたプレス成形や溶接による従来工法と比較して、部品点数の削減および製造工程の簡素化、車体の軽量化や剛性向上を図ることができる技術として近年大きな注目を集めています。一方で、ギガキャストで用いられる超大型ダイカストマシン(型締力*3が6000tを超えるような鋳造設備)は金型一式のサイズが巨大で、金型1ブロックのサイズも大きくなります。従来鋳造されているダイカスト製品の金型およびそのブロックサイズは最大でも厚み450mm以下、重量2.0t以下ですが、ギガキャスト工法では最大で厚み650mm程度、重量2.0t以上のものが使用されます。ブロックサイズが大きくなると、従来の金型用鋼を使用した場合は焼入性の不足により十分な素材性能を得ることが難しくなり、鋳造使用中の破損による金型寿命の低下に繋がります。
これを受けて当社は、ギガキャストによる金型サイズの大型化に対応できる素材の開発を進めてきました。
2.特長
焼入性の向上により超大型ダイカスト金型の中心部まで高い靭性*4を確保、鋳造使用中の割れを抑制
金型サイズの超大型化に適した化学成分の見直しにより、金型の焼入れ冷却工程において粗大なベイナイト組織(靭性を低下させる針状組織)の発生を大幅に抑制し、一般的な熱間金型用鋼であるJIS SKD61 相当鋼に対して約4倍の焼入性を実現しました。焼入性の向上により、大型の金型でも表層から中心部にかけて微細で良好な金属組織を得られ、高い靭性を確保できるため、鋳造使用中の割れが抑制できます。割れの抑制により金型の補修や交換が減ることで、大型ダイカスト部品のトータルコスト低減に貢献します。
3.供給体制
当社は、ギガキャスト工法の適用が先行している中国において、無錫頂鋒日嘉金属制品有限公司(住友商事グループ)と連携した在庫体制を整備、導入済の同社大型熱処理設備と独自熱処理プロセスを用いギガキャストのニーズに対応します 。また、国内においては、当社子会社の大同DMソリューション㈱をはじめとした特約店各社と連携した供給体制の整備を進めています。
当社はこれからも特殊鋼事業のリーディングカンパニーとして、産業の発展に寄与し、人の暮らしを豊かにすることで、社会に貢献することを目指し続けていきます。
製品名 |
DHA-GIGA: Die Hot Ace – GIGA (超大型ダイカスト金型用鋼) 呼び名:ディーエイチエーギガ “DHA”は大同特殊鋼株式会社の登録商標または商標です。 |
売上目標 | 2030年度 40億円 (製品形状:平角) |
特許 | 日本、中国、アメリカ、欧州、韓国、台湾で出願中 |
<参考>
- DHA-GIGA リーフレット (日本語版)
- Leaflet for DHA-GIGA (English ver.)
- DHA-GIGA 宣传手册 (中文版)
用語説明
*1 ダイカスト | 金型を組合せてできる隙間に、溶けた金属を高温・高圧力で押し込んで固め、肌の綺麗な鋳物を短時間で大量に作る方法。製品の多くは自動車部品。 |
*2 焼入性 | 焼入れを行ったときにいかに内部まで焼きが入るかを表す指標。 |
*3 型締力 | 溶解金属が隙間から飛び出さないように、ダイカストマシンで金型を締め付ける力。大きな製品を製造する場合にはトン数の大きなダイカストマシンが必要になる。 |
*4 靭性 | 破壊に対する安全性を表す指標で、強さと変形する能力を兼ね備えた粘り強さを表す。 |
以 上