大同特殊鋼株式会社(社長:石黒武)は、第2世代のプレミアムSTC炉*1を発売するとともに、このたび、宮崎精鋼株式会社様から初号機を含む2基を受注しました。
プレミアムSTC炉(第2世代)は、精密炉圧制御機能等の複数の新開発機能を搭載することで、標準型STC炉(20t/チャージ*2)対比で燃料ガスの15%、窒素ガスの30%削減、操業時間の8%短縮を実現するとともに、処理に伴うCO2排出量の11%削減も達成しています。
また、計装システムのフルリニューアルにより専用Wi-Fiによるタブレット監視機能を標準化し、外部ネットワーク接続による遠隔監視機能もオプション設定することでIoT*3/UX*4機能を強化しています。
さらに、熱回収の効率化により火炎温度が上昇することで増加する燃焼排ガス中に含まれるNOX(窒素酸化物)を低減させるNOXバスターTMを装備することで省エネ性と環境性の両立にも成功しています。
1.背景
カーボンニュートラルが求められる社会情勢の中で工業炉の省エネ化によるCO2排出量の削減は急務の状況です。特に工業炉の中でも雰囲気炉*5は、炭化水素系のガスを変成させて炉内雰囲気を生成するため、処理材料の加熱に伴い排出されるCO2に加えて雰囲気ガス生成に伴い排出されるCO2の削減も課題とされてきました。
また、労働人口の減少に伴う熟練作業者の減少、働き方改革による交替勤務負荷の軽減といった課題に対し、工業炉のIoT化が強く求められる状況となっています。
2.プレミアムSTC炉(第2世代)の特徴
(1)省エネ
・DINCS
バーナ排ガスから高効率に熱回収を可能にする高効率熱交換器です。(第1世代から引き続いて搭載)
・精密炉圧制御機能
炉圧に応じて雰囲気ガスの送気を精密に制御することで、吸熱型ガス・窒素ガスの使用量を最小化。
希釈ガスを減らすことで炉内のCO濃度が早く上昇することにより処理時間を短縮、燃料ガスも削減。
・常時バーナ排ガス監視
全バーナの排ガス中に含まれる残留酸素濃度を常時測定、空燃比の悪化に伴う燃費悪化時に警告。
燃焼調整のガイダンス機能も搭載し、非熟練の作業者でも燃焼調整可能。
これにより常時最適な燃焼状態を維持、経年による燃費悪化を防止。
・完全非水冷炉殻
高性能断熱材と空冷機構の採用で非水冷化、冷却水による熱損失がゼロ。
水冷部からの冷風影響がなくなることで炉内温度分布が改善。
(2)IoT/UX対応
・タブレット監視
操炉作業のインターフェースをタブレットに集約、グラフィックも直観的な操作を前提とした表示に変更。
場所の制約なく、処理品状況等を確認しながらの操炉が可能となるため、新人教育期間の短縮やヒューマンエラーの防止が期待されます。
・ネットワーク監視
外部ネットワークへの接続機能により工場外からも炉の状況を確認することが可能です。
※セキュリティー強化のため、接続範囲を限定することも可能です。
(3)環境性
・NOXバスターTM
バーナ先端にNOXバスターTMを設置、排ガスを再循環させることで緩慢燃焼させNOXを低減します。また、NOXバスターTMにより火炎方向が制限されることからラジアントチューブの負荷が軽減。
STC、プレミアム STC、DINCSは大同特殊鋼株式会社の登録商標です。
当社の星崎工場で稼働するプレミアムSTC炉(第1世代)
用語説明
*1 STC炉
線材コイル、各種冷間鍛造品など多品種小ロット製品の多様な熱処理を可能にした設備。
標準型STC炉と高性能な省エネシステムを搭載したプレミアムSTC炉の2タイプがある
*2 チャージ
1室の炉で熱処理する回数を表す単位
*3 IoT
Internet of Thingsの略。あらゆるものがインターネットでつながっていること
*4 UX
User eXperienceの略。ユーザーが製品やサービスを通じて得られる体験
*5 雰囲気炉
ワーク(製品)を大気雰囲気下で加熱せず、充填した保護ガス雰囲気下で間接加熱する炉
宮崎精鋼株式会社の概要
本社所在地 | 名古屋市中川区丸米町一丁目1番地 |
代表者 | 代表取締役社長 宮﨑 元伸 |
事業所 | 本社工場(名古屋市)、十四山工場(弥富市)、知多工場(東海市)、 Miyazaki Seiko de Mexico(メキシコ ハリスコ州) |
以上